今年度最後のお散歩ツアーを開催しました。今回は、館山市にあります九重地区。九重地区は、
館山市の東部に位置し、古代には既に大規模な土地開発が行われた地域です。安東を中心に水
岡・宝貝などには南北朝時代前後の「やぐら」や石仏・石塔・仏像などが残され、中世にも有
力な豪族が活動していた事が分かります。そんな九重地区を散策してきました。
出発は、九重小学校の近くの空き地。まずは、道沿いにある六地蔵へ。
六地蔵は寛保3年(1743)の銘が入っていて江戸時代に造られた物です。他にも馬頭観音など
の石造物がいくつかあります。
次に向かったのは熊野神社。
境内には、大正大地震の記念碑などがあり、裏山には、複数の横穴があります。
蓮蔵寺の少し手前には、六地蔵と石仏群があります。その中になんとも優しいお顔をした
如意輪観音様がいます。側には丸彫りのお地蔵さまが2体あり、なんともいえないほっこり
した感情になります。
蓮蔵寺は、曹洞宗の寺院で、本尊は南北朝時代作の木造釈迦如来坐像です。お寺の背後の山
の中腹には10数奇基の横穴があるそうです。
次は、お隣?にある天満神社へ。
こちらの狛犬は、天保11年(1839)に長須賀の石工鈴木伊三郎が作ったものです。
のどかな道を通り、水岡やぐらへと向かいます。途中、ふきのとうやセリなどが顔のぞかせて
いました。
水岡やぐらは、私有地なので許可なく見学する事ができませんが、今回は地主さんの許可をいた
だき見せていただきました。(少し足場も悪いので気を付けて見学しました)
「やぐら」は、中世(鎌倉時代中頃から室町時代前期ごろ)の武士・僧侶階級のお墓や供養施設
です。古代の人のお墓で横穴式古墳があり、見た目は山肌に穴を切り抜いているということで同
じように見られますが、横穴式古墳とやぐらの違いは、やぐらが平安時代からの有力者の墳墓堂
である法華堂を岩窟の堂とした仏殿であるということです。房総のやぐらは、古墳時代の横穴式
古墳をを転用しているのが多いのが特徴です。「やぐら」は鎌倉市周辺に多く分布しております
が、房総半島南部にも数多く存在します。武士階級のつながりや鎌倉寺社領の広がりや、東京湾
海上交通などが考えられ、やぐらが密集する地域が、鎌倉寺社領と重なっていことが多いそうです。
鎌倉と房総半島南部は深い繋がりがあったという事です。
この水岡やぐらを見たい方は、館山市の博物館にレプリカがありますので、そちらで御覧下さい。
次に向かったのが、紫雲寺です。
曹洞宗の寺院で、本堂裏手にやぐらがあります。また、墓地内には、万石騒動で追放処分になった、
名主・庄右衛門のお墓があります。万石騒動というのは・・来年度のお散歩ツアーでお話しします。
最後に向かったのが、千手院です。
尾根の先端に掘られた「やぐら」を、お堂に改造したもので、内部には本尊の石造千手観音坐像と、
文和2年(1353)の石造地蔵菩薩坐像などがあります。
やぐらの真上に南北朝時代と思わる宝篋印塔があります。
石造地蔵菩薩坐像と宝篋印塔は館山市指定文化財です。